人材紹介のやりがい③~才能を埋もれさせるな!~
シリーズ連載第3弾。
今回は逆転転職について書いてみる。
例のごとく詳細はところどころぼかしたりフェイクを入れているが大筋ではあっている。
彼女が登録に来たのは数年前の寒い時期だった。
(ダウンを着ていたことは鮮明に覚えている。)
彼女はアメリカの大学で医学を勉強していた。
色々あって途中で帰国することになったのだが、
日本に帰ってきた彼女を待ち受けるのは学歴の壁だった。
日本では”高卒”扱いになるからだ。
私は彼女のクレバーさから、ニーズを探し出すことに決めた。
彼女には医療に対する”想い”を感じた。
絶対に彼女に合う会社はある。
普通に探したら翻訳の会社がヒットした。
単に英語力だけを見ている求人だ。
彼女が海外で過ごした数年は単に英語力に置き換えられるものではない。
となると、英語力×医療の会社がベストだろうと思った。
私が紹介した企業は東証1部のとある医療関連の企業だった。
個々の企業からは唯一「オープンポジション」のみ頂いていた。
オープンポジションというのは、要は「いい人がいたら面接しますよ」というポジション。
ちなみにこのポジション自体は少し前からいただいていたのだが、面接に行った人はことごとく落とされていた。
それもそうだろう。
ほとんどは医療業界に心底興味ある人は受けていなかったのだから。
だが彼女は違った。
この企業なら絶対に輝けると思った。
私の熱心なアプローチから、ご応募していただくことになった。
企業の方にも、熱い紹介文を書いた。
「絶対に合って損はしません。時間を下さい。」
そして面接に入った。
選考は問題なくとんとんと進んでいった。
ただ、彼女はこの企業以外も併願していたのだ。
応募していた企業は医療系の翻訳を手掛けている会社。
医療×英語という点でこの企業も悪くはなかった。
そんな中で選考は進んでいく。
結果的にこの有力候補はお見送りになったのだが、
派遣会社で翻訳の仕事が見つかったとのことだった。
しかも、内定の回答期限が区切られていた。
私の紹介した企業も最終面接は終わっていたが、
結果はまだ来ていなかった。
「どうしますか?まだ結果は来ていませんが、
医療とは別の翻訳のお仕事でもよいのですか?」
私は聞いた。
「私の考えは決まっています。翻訳のお仕事は断ります。
この会社で働きたいと思ってます。」
彼女の意思は固かった。
ほどなくして、彼女には私の企業から内定が出た。
このような形での内定はこの企業としても初だった。
こういう時に自分がいたことを、
その意味を感じれる。
頂いた報酬はあまり多くはなかったかもしれないですが…(笑)
エピローグ
とある日、この企業に訪問した際、応接室まで案内してくれた方は、
なんと彼女だった。
持ち前のクレバーさを活かして、経営企画に携わっているとのことだった。
初めは事務職としての入社ということだったのだが…
この企業も抜け目ないと思いつつ、
楽しそうな彼女を見るとそんなことはどうでもいいと思うのだった。
人材紹介のやりがい②~ひっくり返す~
シリーズ連載第2弾。
人材紹介をやっていると、同じような求人はあっても、
その決定一つ一つは異なります。
それゆえ人材の営業を経験した方というのは多方面で活躍できるのかも知れませんね。
そんなわけで思い出に残る縁づくり第2弾です。
とある企業からの依頼で、技術営業のオーダーをいただきました。
医薬品の試験を受託する大手の企業だったのですが、受託側として医薬品メーカーとやり取りをすることから、医薬品関連で知見を持っている方がターゲットでした。
研究をされていた方は、引き続き研究や試験をする職に就きたいという方が多いので、
なかなか募集が集まっていない状況でした。
ーーー時は同じころ。
求職者へのアドバイザー業務を始めてしばらくたったある日のこと。
面談した方はなんと実家で靴箱を作っている方でした。
(実際は靴箱ではないですがかなり近いです笑)
以前は大手の企業で医薬品の試験責任者を経験されていたのですが、実家の手伝いをする必要がなくなったので、企業でまた就業をしたいとご相談に来られました。
しかし、数年のブランクがあり研究職としては書類が通りません。
そんなタイミングもあり「この求人なら企業も通してくれるだろう」とおもい、先述の求人を紹介したのでした。
「是非とも挑戦したいです」
とのことで、さっそく書類選考開始。
「ブランクはありますが、試験責任者の経験があるので、まずは会ってみてください」と先方への紹介文面には記載させていただきました。
以前に実績があった企業だったのでまずは面接の場を設定していただくことに。
1次面接が終わった後、意気揚々と企業の方へ連絡し、感触を確かめます。
しかし・・・
「経歴は悪くないですが、営業向きの方とは思えませんでしたねー」
という反応。
しかし、ここで終わっては紹介業の意味がありません。
「これだけの経験をお持ちの方がこのポジションに応募していただけることってなかなかないですよ!?もう一度面接して判断していただけませんか!」
と、食い下がる。
先方もかなり迷ったようですが、結果的に最終面接に進めることとなりました。
さて、面接が進んだはいいものの、このままだとたぶん最終面接でお見送りになってしまうでしょう。
1次面接のフィードバックを基に、
「次の面接では明るく、営業向きのイメージをお願いします。できる限りでいいです。」
「髪を切ってさわやかにしていきましょう!イメージ戦略も重要です!」
と、徹底的に対策を進めていきます。
迎えた最終面接。
終わりと同時に候補者の方に連絡。
行きたいという思いは変わらない。
それならばと、準備していたお礼状の送付を行います。
※お礼状とは…
企業へ面接のお礼をしたためた文章。実際は「内定が出たら絶対行くから、内定お願いします!」という意味がある。
そして、企業へ連絡。
「まだ確定ではないですが、いい方向です。営業適正はわかりませんが、意欲を買いたいと思います。」
淡々とした言い方だったが、これは良い方向だと感じました。
そして数日後、企業から内定通知書が届き、無事にその職場へと決定となりました。
文章にしてみるとなんてことないように思えますが、たぶんそのまま先方のフィードバックを聞き流していたら、
たぶんこの方はお見送りになっていたと思います。
でも、「絶対にこの人が入った方がいい!」と思い、アクションをとり、
間に入るものとして縁を作り出すことができました。
おこがましいかもしれないですが、自分がいたからこそ決まった案件だと思います。
人材業界でよく言われる”介在価値”というやつだですね。
早期退職をしたという話も聞こえないので、まだ頑張ってくれていると思います。
切れそうな円を結びなおすことも我々の仕事であると思います。
人材紹介のやりがい①~ニーズを作り出す~
しばらくはシリーズものとして、自分の振り返りも含めて、人材紹介のやりがいみたいなところを書いていこうと思います。
今回は私がはじめてサポートした方について書いてみようと思います。
私が大阪にいたころ、はじめは営業担当をしていたのですが、
そこで”栄養士の方”を探すという求人が出ました。
栄養士の方の多くは学校やら病院やらで献立やら給食を作ったりするという職務に就く方が多いのですが、労働環境があまり良くないので、より良い環境を求めて転職先を探す方が多いです。
人材会社の中でも栄養士の人がこういった現場以外に行ける求人ってあんまり多くはないです。
私が頂いたのは病院で栄養士をしていた方をバックオフィスで採用したいというオーダーでした。
病院給食を提供している企業で業界のことがわかる人=栄養士
という図式のもと、人材を探してほしいというオーダーで、私がスカウトサイトからお声がけした人から、オファーメールに返信があり、面談となりました。
結論から言うと、その企業は書類出してお見送りに・・・
採用方針の変更というやつです。
この仕事をしているとよくあることなのですが、ターゲットによっては、その方にご紹介できる求人が、その求人以外になかったりする場合もあり、そういう時はホント憤慨ものです。
さて、たまたまその日はその方と面談をしたばかりで、私の企業以外に紹介できる求人を探していたのですが、やはりなかなかヒットしません。
どうしたもんかと考えあぐねていたら、営業担当が各テーブルを回ってきて、
「今日お酒のメーカーに営業にいくんですけれど、新しく商品開発をできる人捜してるみたいで、誰か提案できそうな人いませんか?」
と言って回ってきたのですね。
すかさず、「病院で給食作ってた人いるので、是非とも提案してください!」
と言って、個人情報の部分を黒塗りにしたレジュメを持って行ってもらいました。
彼が営業から帰ってくると、
「先方があってみたいいうてた!応募意思とってもらえる?」
とのこと。
いきさつを私の登録者にお話しして、
「ご応募してみませんか?」
と、ご案内したところ、
「挑戦してみたいです!」
とのこと。
私の企業と一緒にその企業も応募することとなりました。
その後私の企業は書類でお見送りになってしまったのですが、
そのお酒の会社は面接に進んでいき、晴れて1/1で決定となりました。
あの時間にデスクにいて、その営業担当の言葉に耳を傾け、
提案をしてみた。
だからこそ生まれた”縁”だったと思います。
求人票にはいわゆる必須要件てやつが書いてありますよね?
こんな人は応募可能ですというスクリーニングなのですが、
時にそれを突破していろいろな方をご紹介することも我々の仕事です。
あまりにあっという間の出来事でしたが、私としては本当にいいご縁を作り出せたと思います。
もちろん面接を突破できたのは本人の力ですが・・・。
その後入社してから少し経った後、彼女が研修先の酒造からお酒を持ってきてくれました。
こういうことも紹介業をやっててよかったなと感じる瞬間ですね。
エピローグ
それから数年経ったある日、突然彼女から連絡がありました。
「お久しぶりです。実は私の知り合いが転職を考えていて、是非ともさぽーとしていただけませんか?」
縁はひろがっていきます。
でもそれは、その時々にベストな行動をしていたからだと思います。
あの時はまだまだ未熟でしたが、
当時の気持ちは忘れずに仕事をしていきたいものです。
それでは。